プランクトン工学研究所

プランクトンの機能を利用した環境問題や食糧問題の解決
※画像はエチオピアで作成したレースウェイ型微細藻類培養ポンド(第一号)です。

プランクトン工学とは

小さなプランクトンが秘める大きな可能性

所長あいさつ

新しい循環型社会の構築を目指す

プランクトン工学は新しい言葉です。プランクトンが持つ特性や様々な機能を実社会で利活用するための技術開発やそのための基礎研究を行う分野です。プランクトンが持つ特性はその体サイズに関係しています。プランクトンは水中に生活する生物の中で遊泳力を持たない、あるいは持っていても弱いので水の流れに抗することができない生物の総称です。プランクトンにはクラゲのように肉眼で見ることができる大きな生物も含まれますが、ほとんどの種は顕微鏡でなければ見えないような小さなサイズです。体サイズが小さければ小さいほど沈みにくく、水中に浮遊しやすいのです。

こうした小さな生物はバイオマスあたりの代謝活性が大きな生物に比べて高いため、生物機能を利用する際には少ないバイオマスですむ、言い方を変えると、少ないバイオマスで高い活性を得ることができます。これは、機能を利用する際に大きな利点となります。プランクトンにはバクテリアや古細菌から、単細胞性藻類、節足動物など多様な分類群の生物が含まれるので、それぞれの分類群の持つ機能を効率よく利用できることになります。

創価大学
プランクトン工学研究所長 
古谷研/Ken Furuya

一例を挙げましょう。植物プランクトン(単細胞性藻類)はヒトが合成できない多価不飽和脂肪酸を生産します。それらの物質の多くはヒトにとっての必須脂肪酸であり食品として摂取することになります。イワシの栄養成分であるDHAやEPAは、もともと植物プランクトンが生産したものが食物連鎖を通してイワシの体内に蓄積したものです。人工条件下で植物プランクトンを使って効率よくDHAやEPAなどの有価物を生産するのはプランクトン工学の一分野です。

創価大学では、こうした研究を進める学内共同利用施設としてプランクトン工学研究開発センターを2018年5月に立ち上げました。センターではマレーシアから分離した株を用いた有価物生産の研究を進めるとともに、新たにエチオピアから採取した培養株を用いて現地における栄養・食糧問題の解決に向けた研究を開始いたしました。このような有価物の生産では、水中に懸濁しているプランクトンを培地ごとまるで溶液のように扱えます。このため、生産プラントを一連のフロー系として組み立てることができるので生産効率を高めることが可能になります。この点もプランクトン利用の利点です。この他にも、有機物を含む排水の処理や、窒素やリンなどの栄養塩除去による水圏環境の改善もプランクトンを利用することで新たな技術展開が期待されています。

プランクトン工学に含まれるのは生物系、理工系分野だけではありません。生物の機能を社会実装に結びつけるためには、社会のニーズを把握し、生産システムを社会制度に適合させることが不可欠であり、また、経済的合理性がなければ持続性は担保されません。このため、人文・社会科学との協働が必須です。こうした文理連携体制を整備し、センターの機能をさらに充実させるためにセンターを発展的に改組して、2020年9月にプランクトン工学研究所が設立されました。

プランクトン工学研究所では、創価大学がもつ総合大学としての強みを活かして生物系、理工系、人文・社会系が密に連携してプランクトンの機能を利用した環境問題や食糧問題の解決に取り組んで参ります。これらの活動を通して豊かな人間社会の実現に貢献し、新しい循環型社会の構築に寄与することを目指しており、本学における「持続可能な開発目標(SDGs)」に向けた取り組みの一環です。皆様のご理解とご支援を心よりお願いする次第です。

研究所紹介動画

プランクトン工学研究所コンセプトムービー

メンバー

プランクトン工学研究所のメンバーをご紹介します。

所長

メンバー

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施設紹介

施設についてご紹介します。

UPLC H-Class PDA-QDa (Waters社製)

  • 混合成分を高精度で分離し物質の特定・定量が可能な分析装置
  • プランクトンの有用成分(色素・抗酸化物質)を測定できる装置

Autoflex speed MALDI-TOF MS(Bruker社製)

  • レーザーを用いて試料を気化し、物質の組成を高速で測定することのできる最新型の分析装置
  • 脳科学をはじめとする多くの生物分野で活躍

直立型屋外プランクトン培養装置

設置場所:理工学部P棟前

  • 実験塔(高さ約15m)に培養パネル(高さ3m)を3枚設置した装置
  • 将来的な建物壁面での屋外培養を視野に入れた培養実験設備

バッグ型屋外プランクトン培養装置

Flat Panel Airlift Reactor (Subitec社製)

  • ドイツから日本に初めて輸入した高性能・全自動微細藻類培養装置
  • 途上国に適した安価なバッグリアクターの開発のため、全自動運転を様々なリアクターで実施可能
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プロジェクト

当大学が行っているプロジェクトについてまとめています。

科研費(日本学術振興会)2020-2023

微細藻類-硝化菌固定化遮光ゲルによる窒素含有排水の低コスト処理:メキシコを例に

このプロジェクトでは、硝化菌を「遮光化したゲルビーズ」で光照射から保護する技術を「微細藻類–硝化菌」共存系に応用することで、メキシコのような日中の光が強いサンベルト地域でも利用可能な、低コスト窒素含有排水処理法の確立を目指します。

SATREPS <国際協力機構(JICA), 科学技術振興機構(JST)> 2021-2025

SATREPS-EARTHプロジェクト

このプロジェクトでは、ナイルの源流エチオピアのタナ湖で過剰繁茂する水草(ホテイアオイ)バイオマスの管理手法と有効利用プロセスの確立を目指します。

SATREPS <国際協力機構 (JICA), 科学技術振興機構 (JST)> 2016-2021

SATREPS-COSMOSプロジェクト

このプロジェクトは、水産養殖廃棄物からのリサイクルされた栄養素を使用した、新しい微細藻類の大量培養システムの確立を目指しています。

私立大学研究ブランディング事業 (文部科学省) 2017-2020

PLANE3Tプロジェクト

エチオピアで過剰繁茂するホテイアオイからエネルギー・栄養塩を取り出し、栄養価の高い植物プランクトンを生産するプロセスを確立し、人々の健康・経済に貢献します。

科研費 (日本学術振興会) 2019-2023

スーパーかいあし類

魚類の餌料として利用可能な、かいあし類にEPA・DHA・カロテノイド系色素を豊富に含有する微細藻類種摂餌させることで、高い生残率・生産率を達成し、なおかつ豊富な栄養素を含有する”スーパーかいあし類”の大量培養技術を確立します。

科研費 (日本学術振興会) 2018-2020

消化液清澄化

砂濾過やバイオ炭濾過など途上国に適した簡易的な技術の組み合わせで、栄養塩を豊富に含むメタン発酵消化液のきれいにして高価値微細藻類の培養を目指します。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)、地球変動観測ミッション気候(GCOM-C) 2019-2022

相模湾の沿岸水域における放射測定、固有の光学特性および植物プランクトンの機能タイプの高周波検証

地球の温暖化を正確に分析するために、放射収支および炭素循環の変動メカニズム解明、気候変動観測(GCOM-C)衛星による地球規模での観測・データ収集を行います。気候数値モデルによる気温上昇量の予測誤差低減と様々な環境変化予測の高精度化に貢献します。

タイトル 執筆者 PDF
有機質廃棄物のコンポスト化における微生物接種の効果 中崎清彦 論文PDF
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紀要「プランクトン工学研究」

紀要「プランクトン工学研究」に関する情報を提供しています​。

プランクトン工学研究 第1号

2021年6月発行

巻頭言

タイトル 執筆者 PDF
「プランクトン工学研究」発刊にあたり 古谷 研 論文PDF

総説

タイトル 執筆者 PDF
光合成能を有するプランクトンを利用した次世代省エネルギー型廃水処理技術の研究動向 秋月真一・
ヘルマン クエバス-ロドリーゲス
論文PDF

原著論文

タイトル 執筆者 PDF
Preparation and characterization of poly(vinyl alcohol)/sodium alginate/TEMPO-oxidized cellulose nanofiber hydrogel for dye removal Wing Shan Chan, Yuichi Shibata,
Kento Nishi, Tatsushi Matsuyama, Junichi Ida
論文PDF
抱卵型カイアシ類Oithona oculataのバイオリアクターを用いた試験的培養 高山佳樹・山本翼・
戸田龍樹
論文PDF
Magnesium-modified biochars for nitrate adsorption and removal in continuous flow system Yun Qi Joo,
Shinjiro Sato
論文PDF
間欠的な曝気撹拌が海産珪藻Chaetoceros gracilisの生産性に与える影響 大竹正弘・家後幸一・平原南萌・
ファティマ ユソフ・戸田龍樹
論文PDF
メタン発酵消化液を用いた微細藻類培養とバイオガス精製同時プロセス 岸正敏・尾内秀美・
田中健児・吉田あかり・戸田龍樹
論文PDF
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プランクトン工学研究 第2号

2022年6月発行

総説

タイトル 執筆者 PDF
微細藻類由来のカロテノイドとその抗酸化能測定手法の研究動向 江崎世雄・関根睦実 論文PDF

原著論文

タイトル 執筆者 PDF
粒子形状の異なるZnO 光触媒の合成と評価 成田 唯人・西 健斗・
松山 達・井田 旬一
論文PDF
25年ぶりに相模湾で発生した円石藻Gephyrocapsa oceanicaによるブルーム 矢野 光一 ・梶 正彦・下出 信次・
村上 浩・虎谷 充浩・
Victor S. Kuwahara
論文PDF
浮遊性カイアシ類Acartia steueriの幼生・幼体の培養における微細藻類餌料の検討 髙山 佳樹・平原 南萌・戸田 龍樹 論文PDF
Hydrothermal carbonization of compressed water hyacinth: Effects of operation parameters on energy conversion and characterization of products Tassapak Wutisirirattanachai, 
Solomon Addisu, Shinjiro Sato
論文PDF
カイアシ類1 個体からのDNA 抽出方法の改良とホルマリン固定期間がミトコンドリア遺伝子のPCR増幅に与える影響 小林 真輝・髙山 佳樹・下出 信次・
戸田 龍樹・黒沢 則夫
論文PDF

短報

タイトル 執筆者 PDF
夏季タイ湾奥部表層におけるヤコウチュウの分布 古谷 研・小薗 健太・
Thaithaworn Lirdwitayaprasit
論文PDF

正誤表

タイトル 執筆者 PDF
『25年ぶりに相模湾で発生した円石藻Gephyrocapsa oceanicaによるブルーム』正誤表 矢野 光一・梶 正彦・下出 信次・村上  浩・虎谷 充浩・Victor S. Kuwahara 論文PDF
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プランクトン工学研究 第3号

2023年6月発行

総説

タイトル 執筆者 PDF
海産浮遊性カイアシ類の大量培養 髙山佳樹 論文PDF

原著論文

タイトル 執筆者 PDF
TiO2 光触媒を用いたプラスチックフィルム分解におけるプラスチックの種類と光触媒濃度の影響 山口真奈未・成田唯人・
西健斗・松山達・井田旬一
論文PDF
メタン発酵-紅色光合成細菌共存系による模擬養鶏屠殺場廃水処理性能の評価 秋月真一 ・藤原正明 論文PDF
温帯沿岸域相模湾における植物プランクトンのサイズ組成と光吸収係数の特徴 矢野光一・下出信次・Victor S. Kuwahara 論文PDF

短報

タイトル 執筆者 PDF
Surface nutrient regime and bottom hypoxia in Manila Bay during the southwest monsoon Ken Furuya, Mari Yasuda, Valeriano M. Borja 論文PDF

報告

タイトル 執筆者 PDF
Practical Science and Environmental Education Workshop in Manaus, Brazil Shinjiro Sato, 
Paulo H.R. Aride, 
Luciano G. do Nascimento, 
Victor S. Kuwahara, 
Yoshiki Takayama, 
Koichi Yano, Marcelo T. Ono, 
Tatsuki Toda, 
Adriano T. de Oliveira, 
Laila Y. dos S. Silva, 
Débora N. Carvalcante, 
Luise B.R. Pereira, 
Francisco F. da S. Brito, 
Mayara O. Martins, 
Sofia R. Aranha, 
André L. de S. Chaves, 
Meris de S. Barros, 
Maria F. da S. Gomes, 
Ana B.S. dos Santos, 
Bruno da C. Takaki, 
Arlindo J.A. de Lima , 
Alexandra dos S. Silva, 
Tamy Y. Kobashikawa, 
Rodrigo Izumi, Tais Tokusato
論文PDF
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プランクトン工学研究 第4号

2024年6月発行

総説

タイトル 執筆者 PDF
有機質廃棄物のコンポスト化における微生物接種の効果 中崎清彦 論文PDF

原著論文

タイトル 執筆者 PDF
Isolation of lipid-rich marine diatoms from the coastal waters of the Goto Islands, Japan Mari Yasuda, Minamo Hirahara, Masatoshi Kishi, Tatsuki Toda, Shuichi Yamamoto, and Ken Furuya 論文PDF
メカノケミカル法によるSr4Nb2O9-Nの調製と光触媒能評価 西健斗・廣川心・松山達・井田旬一 論文PDF
微細藻類-硝化細菌共存系によるメタン発酵消化液中窒素の省エネルギー処理 秋月真一・ヘルマン クエバス-ロドリーゲス 論文PDF
海産カイアシ類Pseusodiaptomus nihonkaiensisの培養における微細藻類餌料の検討 髙山佳樹・古閑伸一・戸田龍樹 論文PDF
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